◆ 現実@遥斗

聞いた時は言葉も無かった。
俺は朝姉貴が出発するまで一緒だった。
何気ない会話を交わして、帰ってきたら弥希と話したいと
少しだけ寂しそうに行ってた顔。
今まで近くに居た人と少しだけ離れるというリアルな寂しさを見せてたその顔を…
思い出すだけで涙が零れた。

いつも繋がっていた携帯はやけに静かだ。
五月蠅いくらいに鳴ってた一つの着信音だけぱたりと途絶えた。
それがやけに現実味を帯びていて生々しい。
ついこの間まで明るく軽い口調で語っていた電話越しが今は無い。

幼い頃の別れの時は涙一つ流さなかった。
流すという選択肢も無かった。
また、会えると俺は知っていたから。

けど今は返答も無い。
軽い憎まれ口も無ければ茶化される事ももう無い。
数年流してない涙は自然と地面に落ちた。
―如何して？
なんて答えは出ない。

泣いても問いかけても前には進まない。
けど今は………今だけは…。
言葉も無い、纏まらない。

今まで楽しかったか？
今まで幸せだったか？
今まで俺は何かしてやれたか？

返事が無いのも知ってる。
知ってるはずなのに問わないと空虚が押し寄せて間も持たなくて。
居ない、という実感に浸る自分すら恐ろしくて目を背けたくなる。

わかってる。けど納得はしてない。
行ってきますと言った背中を思い出しては後悔してる。
いけない事、けど俺は此処で仕方ないと言える程心は広くなくて。
人間も出来上がってなくて。


けど今はせめて…安らかな眠りを。
いつかちゃんとまた茶化されてやるから。
待っててくれ、な



…………姉貴。

心の整頓と背後の事情で結社は委任して、動いて黙示録＋それ以下。
具体的にはもう少し考えて結論を出す。

今言えるのはそれだけ。
正直本気で言葉が無い。